絵描きにとって、お尻はこだわりたいポイントですよね。
でも思うように描けない、という悩みを抱えてはいませんか?
ネットで調べてみても、
- 骨格や筋肉など、複雑怪奇な知識を並べたてられたり
- どんなアタリを使えばいいか書いていなかったり
- 書いてあってもそのアタリは何を意味するのかがわからなかったり
でモヤモヤ。
そんなあなたのために、本記事では女性のお尻のかんたんな描き方をお伝えします。
- かんたんなアタリをもとに描いていきます
- そのアタリは何を簡略化しているのかをはっきりさせます
- より違和感なく、魅力的なお尻を描くためのポイントもお伝えします
この記事を参考にしていただければ、パパッと、思いのままに見る者を惹きつけるお尻が描けるようになりますよ。
ぜひ読み進めながら、あなたもいっしょに描いていきましょう。描かずして上達はありませんので。
この記事の構成はこんな感じです↓
今回使うアタリは?
こちらをアタリとして用います。
赤の面を台形、緑の面を台形もしくは長方形、青の面を長方形とする立体です。向かい合う面は同じ形です。
これをいろんな角度から描いてみてください。
描けたら、天面の長辺にこういう2つの点を打っておいてください。これで準備完了です。
とりあえずひとつ描いてみる
このアタリをもとにひとつお尻を描いてみましょう。私の考える、お尻がもっとも魅力的に見えるアングルです。
簡単なものですが、こちら動画になります。
始めの2手までは重要なところなので説明をさせてください。
まずこのように中央に台形を二分する線を引きます。これがお尻の割れ目にあたります。
次にアタリに打った2点から逆三角を作るように線を引きます。これはお尻のふもとにできるお肉の段差にあたります。ここはなだらかにつながる人もいるので、最終的な描き方はお任せで。
あとは動画の通りに描き進めていけばひとまず完成します!
どうでしょうか?はじめてでもそれなりのお尻が描けたあなたは素晴らしいです。このアタリの威力を感じてもらえたところで、いよいよ「なぜうまく描けるか」のネタバラシです。
なぜそれっぽく描ける?アタリの正体
一言でいうと、このアタリは骨盤と大腿骨(太ももの骨)の一部を簡略化したものです。骨盤と大腿骨は本来こういった形をしています。
めちゃくちゃ複雑ですよね…もうこれ以上描きたくないです。というわけで、なんとか単純なかたちに置きかえたものがさきほどのアタリです。
それでは、骨盤のどの部分がアタリのどこに対応しているのかを説明しますね。
上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)
お腹側の上2つの頂点は上前腸骨棘という骨盤の特徴的なでっぱりにあたります。
大きな突起なので、体表にでっぱりとして現れます。
なので、上前腸骨棘はしばしば明るい面として表現されたり、斜めを向いた時の腰回りのシルエットにエッジをもたらしたります。
お尻と直接関係ないので、ササっと次にいきます。
上後腸骨棘(じょうこうちょうこつきょく)
背中側に打った2つの点は上後腸骨棘という、これまた骨盤のでっぱりにあたります。
こちらはやや控えめな突起なので、体表にくぼみとして現れることがあります。
女性の豊かな肉付きを強調したい場合はくぼみを描いてみましょう。
アニメなどでもこのくぼみは表現されることがあります。
引用元:©Koi・芳文社/ご注文は製作委員会ですか? 「ご注文はうさぎですか?」第8話
スレンダー体型がお好みであればくぼみは不要です。
- 同じ突起なのに、なぜでっぱったりくぼんだりするの?
-
骨の突起の「脂肪がつきにくい」という特徴は正反対の結果を引き起こすから
骨の突起に脂肪はつきにくいので痩せ~普通体型のひとはその部分だけでっぱって見えます。一方、肉付きのよい人の場合骨の突起の周りの部分にのみ脂肪がついて厚みを増します。そのため骨の突起が一転、くぼみになります。
手の甲にある、指の付け根の骨って赤ちゃんやぽっちゃりした人は逆にくぼんでいますよね。
大転子(だいてんし)
底面の短辺は大腿骨の大転子によって形成される、下半身でもっとも横幅が広くなる高さのラインを示しています。
以上に挙げた3つの要素は、どれも骨がでっぱっているために身体の外見に強く影響します。そのため、描く際のよい目印になりますよ。
あと、タイミングを逃してしまって書けなかったのですが、女性を描く場合はこのアタリは身体前方に傾けてください。
これら以外の辺や頂点、面にとくに意味はありません。ご自由にアレンジしてもらって結構です。
いろんな角度から描いてみる
カラクリを理解したところで、実践としていろんな角度からお尻を描いてみましょう。
等倍速のメイキングを撮ったので参考までにどうぞ。↓
まずはアタリを描きます。
底面には局部のアタリを細長い△で付けておきます。局部はそのアタリからさらに盛り上がって、厚みを持つことに注意してください。
アタリが描けたら、ラフに入ります。
↓
↓
↓
せっかくなので、もうすこしタッチを加えてみます。
↓
私のように大きなお尻が好きな方は骨盤のアタリそのものの横幅を広くとってもOKです。
小ぶりなお尻が好きな方はその逆ですね。
さらに魅力的なお尻へ ~5つのポイント~
ここまで読み進めていただいているということは、さまざまな角度からお尻が描けるようになったのではないでしょうか?
ここからはさらなるレベルアップのために、より魅力的なお尻を描くためのポイントを5つお伝えします。
- お尻はお股より低い
- 太ももとの境界にできる「あの」線の描き方
- 左右の輪郭をそろえない
- 太ももの生やし方
- 上向いた背中を広くとる
お尻はお股より低い
お尻の形はマスターしたはずなのに、なんかバランスが悪いな…
というときは、これをチェックしてください。
「前から見えるお尻」はこういう理由があるのです。
太ももとの境界にできる「あの」線の描き方
「あの」線ってなんだよと言われそうなので、お示ししますね。これです。
お尻のお肉と太ももが干渉してできるシワのことです。臀溝(でんこう)というらしいです。(右下はどちらかというとお尻そのものの丸みですが)女性の肉付きの良さを強調したいときは積極的に描いていきましょう。
そしてこの線、けっこうやっかいです。というのも、アングルや脚の向きによってその形を大きく変えてしまうんです。このことは、すぐ上のイラストを見てお分かりの通りです。
ここでは、とりあえずこういう時はこう描いたらどう?というおおざっぱな法則を説明しますね。
- アオリ(下からアングル)になるほど上に凸になる
- 脚の向きによって線の凸の向きも変わる
- 脚を前に出すと線は消える
アオリ(下からアングル)になるほど上に凸になる
下に凸になっているかたちはお馴染みですが、視線を下げるにつれ上向いていきます。
脚の向きによって線の凸の向きも変わる
脚を奥に向かわせることによって、擬似的にフカンで見ている状態になり線は下に凸りがちに。
「線をどちらに凸にするかによって脚の向きを決める」という逆の考え方でも良いですね。
脚を大きく前に出すと線は消える
歩いたり、お尻を強調するポーズをとったりと、脚が大きく前に出ると線は消えます。
「大きくって、どこから…?」と考えるとこれまた泥沼なので、ここも「線を描かないときは脚が大きく前に出ていることにする」でよいと思います。
左右の輪郭をそろえない
さきほど述べた臀溝(お尻と太ももの境界線)ですが、これはお尻の穴に近くなるほど深く、身体側面に向かうにつれ浅くなりやがて消えていきます。
このことから分かることとして臀溝を持つ大きめのお尻を描く時は、真後ろのアングルを除いて、お尻の輪郭は同一であってはいけません。
手前の輪郭に段差を付けるなら、奥の輪郭はそれより浅い段差を、もしくはなめらかな線で描きます。
太ももの生やし方
脚を閉じているときなど、向こう側の太ももが完全に見えない場合はそこまで悩むことはありません。
しかし、このようなポーズになるとどこまでが太ももなのかが分からなくなりがちです。
ここでのとっかかりは、太ももの断面図。
太ももを水平に輪切りにすると、こういったシルエットになります。
最大の特徴は、内ももの部分が平たくなっている点。
これにより後方斜め45°から腰回りを見ると、手前の太ももは太く、奥の太ももは細く見えます。
逆に前方斜め45°から見たとき、手前が細く、奥が太く見えます。
この事実をもとに、まず描きやすい手前の太ももを描いたら、奥の太ももはやや細めに描くとそれっぽくなります。
ちなみに、ここはあまり意識されないところなので、同じ太さで描いても全然OKです。むしろ太さを変えたことが違和感につながっていると感じたら、なおさらやめておきましょう
イラストは見たときに気持ち良い、かっこいいのが大事です。正確さは二の次!
上向いた背中を広くとる
女性の骨格の特徴として、
- 胸郭が小さい
- 骨盤の背が低い
の2つが挙げられます。
これにより、女性の上半身は一見胴長に見え、お尻になだらかにつながる背中のスペースが広くなります。一方、男性はお尻の上端にすぐ反り立つ背中が現れます。
女性のお尻は背中から始まっている、と考えてもよいかも。
もっとうまくなりたい方へ
ここまでほんとうにお疲れ様でした。腰回りの骨や肉付きの知識はこの本で仕入れたものになります。
スカルプター(彫刻家)とありますが、絵描きのための本でもあります。
リアルと図解を往復しながら複雑な人体を丁寧に説明した良書です。
個人的に、人体の写真の上から「ここはこの筋肉にあたります」と色を塗って示してくれていることに感動しました。
けっこう厚い本なのですが、絵描きに必要な知識だけに厳選されています。デフォルメされたイラストを描きたいのであれば人体の知識はこれ一冊で事足りると思いますよ。
資料を求めてGoogleやPinterestをさまよう日々からはサヨナラです。
ただ、この本のどこに何が書いてあるかが分からないと結局この本の中でさまようことになるので、手に入れたら何度も本を開きましょう。しっかり読むのではなく、適当で大丈夫です。どこに何が書いてあるか覚えて、必要に応じて辞書的に使える状態に持っていきましょう。
ちなみに人体をどうデフォルメすればよいかはさすがに描かれていないので、それについてはまたネットで探す必要がありますね。絵柄を真似ている or 似ているイラストレーターさんのpixivを見るのが一番速いでしょうか。
女性のお尻のかんたんな描き方を丁寧に解説します【スッと描ける】のまとめ
この記事では、女性のお尻のかんたんな描き方について解説してきました。骨盤と大腿骨を単純化したアタリをもとにいろんな角度からお尻を描いていき、最後により魅力的なお尻を描くためのポイントをお伝えする、という流れでしたが、いかがだったでしょうか。
このページを開く前より、今あなたはきっとうまくお尻を描けるようになっているはず。創作の中で今回学んだことを活かしてもらえればなによりです。役に立った!という方はコメントになにか好きな絵文字でも打ってくださると励みになります。感想や指摘があればコメント欄までお願いします。
それでは、よいお絵描きライフを!
参考資料・サイト
【おしりの描き方】このポイントに気を付ければどんな角度からでも簡単に描けます!
アタリはこちらの動画で説明されているものを紹介しました。
アルディス・ザリンス, サンディス・コンドラッツ. スカルプターのための美術解剖学. 株式会社ボーンデジタル, 2021
p.52, 190, 191 上前腸骨棘、上後腸骨棘
p.53 ミカエルのひし形
p.203 ふとももの断面
お尻の描き方をイラスト解説!男女の描き分け方を覚えよう
「上向いた背中を広くとる」はこちらを参考にしました
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